環境省補助金活用による活動紹介
環境省二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金(環境省:木材利用による業務用施設の断熱性能効果検証事業)活用 「ジグザグラボ」
北九州市立大学 福田展淳
[主旨]
ジグザグラボ
わずか90mm厚、最大製作寸法3m×12mを用いた日本初のCLT折版構造
意匠設計 福田展淳 構造設計 藤田慎之輔
この建物は、環境会議でも、話題に上ったCLT構造が、断熱性能や熱容量の観点から、構造面だけでなく環境面でも優れた材料であることを検証することを目的に環境省の補助金を得て設計させていただきました。
用途は、北九州市立大学キャンパス内にあり、木材の不燃化や高強度圧縮集成材の実験・研究を行う施設です。
1)CLT折板構造
集成材が、木材の繊維方向に高い強度性能を有する軸材であることに対し、CLTは、板材を直交させて貼り合わせることによって、面材として高い強度性能を有します。この面材としてのCLTの特徴を活かし、屋根と壁を折板構造として、幅8m、高さ8.5mの大空間を実現しました。
CLTの折板構造を屋根に用いた事例は既にいくつかありますが、壁、屋根とも折板構造となる建築は、おそらく国内発です。
また、国内で製造可能な最大サイズのCLTパネル(幅約3m×長さ約12m)を利用した発の事例であること、これだけの大空間を実現した折板構造の厚さが僅か90mmであることが大きな特徴です。コスト削減にもつながりましたが、いかに薄いCLTでこの大空間を実現するかが、構造設計上の大きな課題でした。
2)環境性能
CLTを折板構造として、柱や梁の役割を担わせているだけでなく、壁や屋根として外皮の役割を持たせることで断熱性能の高い、大空間を実現しています(壁のU値0.45W/m2・K、屋根のU値0.31 W/m2・K)。
CLTを外壁や屋根として使うとどの程度断熱性能が上がり、省エネルギーとなるかを検証することが補助金(環境省)を頂く要件になっています。
通常、鉄骨やRCで同程度の空間を作ると、熱容量(温度を1℃上げるために必要な熱量)が高いため、空調エネルギーは、空気を冷やしたり暖めたりするために使われるだけでなく、躯体のコンクリートや鉄を冷やしたり暖めたりするために使われますが、この建物は、構造材に木材を使うことで、熱容量の小さな建物となっています。天井が高く気積は大きい空間ですが、熱容量が小さいため、躯体に奪われる熱量は低く、同様の通常の建物よりは、エネルギー負荷が小さいと考えられます。空気自体の比熱(物質1gの温度を1℃あげるのに必要な熱量)はコンクリートや鉄に比べ非常に小さいため、空間自体が大きくなったとしても、空調負荷はそれほど大きくならないためです。
3)補助対象額とCLTにかかった経費
補補助率は補助対象経費の4分の3ですが、実際の総工費1.28億円に対し、約4600万円で約36%でした。
また、CLT費用5570万円のうち、パネル材が33%、金物が24%で、材料費に比べ、金物が高いことが分かりました。





